美しいものと私の邪念

 

枯れたヒヤシンスがとってもすてきに見えて、特に葉っぱが。

それでこの美しさをぜひとも描きとめたいと思い、向き合った。

しかし鉛筆を手にとった瞬間から、邪念が湧き出てどうしようもない。

この場合の私の邪念とは、

上手に描いて褒めてもらおう、というものが主である。

 

しかしここには誰もいない。

ああだこうだと言って、私をもっと上手にさせようと努力してくれる先生もいないし、

描いた絵を並べ比べて、あの子の方がもっと上手だとか

私の方がこの点では優っているとか、そうゆう競争をする仲間もいない。

 

あとでインスタグラムに載せてみんなに見せびらかそうとも思うけれど、どうもつまらない。

見せびらかしたところで、特に何も返ってくるものはないように思う。

 

そんな邪念だらけの頭ではとうていこのヒヤシンスの美しさには追いつけず、ため息ばかりでる。

 

もうあきらめようかと思ったころに、手が動き出した。

心地よい風に動く。ずっと前からどうやって動くか知っていたかのように動く。

それは一瞬で終わって、ヒヤシンスの全体を掴むところまではいかなかったけれど、

私はこれで良し、と納得した。